アートシェアの可能性 ‐ 『それでもボクは買ってない』 / by Youki Takai

先日、loftwork × isand JAPANの「Welcome! Art Office」に行ってきました。
loftworkのイベントスペース兼オフィスで若手作家の作品を展示・販売するイベント。

以前「『アートを買う』ということ」というエントリでも書いたけど、若手作家やインディーズアートをどう健全な形でマーケットに乗せるか、ということを考えていたので、直接アーティストやギャラリーの方と話ができたのは本当によかった。

思ってることは決して間違ってないと思えたという意味でも、その上で課題を突きつけられたという意味でも。

当日のレポートはこちらからどうぞ。

表現する人と見る人が出会うオフィス | Welcome! Art Office

“作品はギャラリーで売るだけでのビジネスではなく、人がいるところにアート作品があって、それを欲しい人がその場で購入する。そんなビジネスの可能性があるはず”(loftwork 林千晶さん)

これは本当にそう。というより、そもそもアート作品を買える場所がなさすぎる。
比較的興味がある方だと思ってる自分でさえ、欲しいと思ったときにどこへ買いに行ったらいいのか正直よく分からない。
「あの作家の作品好きだからちょっとそこのギャラリーまで買いに行ってくるね」って場面を想像してみたけど、やっぱり生活動線から外れすぎて不自然というか無理があるでしょ?
そう考えると、やっぱりまだ「場」としてのアートマーケットの不在というか、需要と供給のミスマッチがあると思う。
このままだときっとずっと、アートは美術館に「観に行くもの」のままで「購入するもの」にはならないだろうし、アーティストとファンの間には壁ができたままになっちゃうんじゃないか。
だから「Welcome! Art Office」は大歓迎だし、こういう場がもっとできて欲しいと思ってる。

“表現する人と見る人の距離をつなげる出会いの場を作っていきたい。アートはアーティストの思いがあって、伝えたい気持ちから作品ができていく。その思いを見る側がもっと共有し、アーティストを応援する、協力する、アーティストの気持ちのカケラをもらう。そんな感覚でアートを身近に感じて欲しい”(island JAPAN 伊藤悠さん)

今回の「Welcome! Art Office」が特に良かったのは、実際に作品を制作したアーティストから直接作品に対する思いのプレゼンテーションがあったこと。
繰り返しになるけど、良くも悪くも、特に現代アートってその作品の背景や意図=コンテクストを楽しむゲーム的な側面があるから、何の事前情報もないまま「感じろ!」というスタンスで観るのと、参考までにだとしても、作家が本来意図した「解答例」や「楽しみ方」を頭に置いてから観るのとでは面白さが全然違う。

何より、生活かけて好きなことに打ち込んでるひとの、好きなことについての話を聞いて楽しくないはずがない。
特に、今回の作家さんたちはみんな20代で世代的にも近かったし、前述の通り、決してアーティストの置かれた状況が楽なものじゃないのも分かってるから、「やっぱりゆくゆくは作品一本で食べていけるようになりたいですね」なんて笑って話すのを聞いてると、余計に共感もするし応援したい気持ちも増す。
単純だけど、やっぱりそういうことをアーティスト自身の言葉で伝えること、コミュニケーションすることが、いちばんファンとアートマーケットの裾野を広げることにつながるような気がする。

いちばんのアート支援はなんといっても「作品が売れる」こと。
そのためにもっとアートとの出会いの接点を増やすこと。
もっとアーティストとのコミュニケーションの場を増やすこと。
もっとアートが気軽に買える仕組みを作ること。

必要だなって考えていたことは間違ってない、という気持ちは話してて強くなった。

でも。
同時に事実として突きつけられたのが、「それでも俺は買わなかった」ということ。
「買えなかった」と書こうとしたけど違う。「買わなかった」。
これだけ偉そうにアートを買う意義を語っているにも関わらず。
あんなに話して応援したいと思ったにも関わらず。

自己嫌悪はもちろんあるけど、その理由を突き詰めて考えることには意味があると思う。
自分で買わないのに他のひとにアートを買う理由を提示はできない。
逆に言えば、そのハードルさえクリアできる仕組みがあれば、アートマーケットが広がる可能性は充分にあるんじゃないか。

思いつくままに買わなかった理由を列挙してみる。

作品にそこまでの魅力がなかった?
決してそんなことはないし、そんな言い方をしてしまったら先に進まない。
むしろ、そんな出会いでなければ買えない前提なのであれば、そもそものハードルが高すぎる。一生のうちににいくつも買えやしない。

値段の高さ?
否定はしきれないかもしれない。当日販売されていた作品は、安いものであれば3万〜6万円程度から買えるものがあったし、この値段は実際、アーティストがかけた労力や時間を考えれば、いくらの儲けにもならないくらい安い設定だったと思う。
でも、それでも、情けない話だけど、個人的にすぐにその場でポンと即決できる金額でもなかったというのが正直なところ。

プロダクト、「物」だということ?
これは難しい。プロダクトとしての物質性があるからこそ、専有することに価値があるとも言える反面、狭い住宅事情もあって飾る場所・保管場所を考えるとちょっと躊躇してしまったのも確か。

結局、買うことで応援したい気持ちはありつつも、こういった諸々が頭を駆け巡るうちに、買うという踏ん切りがつかなかったというのが実際のところだったと思う。

じゃあ、「即決できるくらいの安い価格で、場所を気にしないで済むくらいの小さなアート作品が増えればいいのか」、というとそれもちょっと違う気がする。小品しか売れない状況では大きなマーケットの成長は難しいだろうし、作家が作りたいもの・表現したいものを満たせない規模のものばかりになってしまうかもしれない。そうなったらそれはアートではなくただの雑貨だ。

アート作品の単価を下げることなく、自分のできる範囲で支援するハードルを下げること。
大作でも少額から買えるような仕組み、つまり「アートのシェア、共同購入・共同保有」がその解決策になるんじゃないか。

例えば、こんなWebサービスがあったらどうだろう。

  • アーティストは、自分の作品にキャプションと値段を付けてサイト上に出品できる。
  • ユーザは、欲しい・応援したいと思った作品に対して好きな値段を支払って、その金額分の「所有権」を買う。
  • 購入者(オーナー)は、所有権の保有比率に応じて、実際の作品のレンタルやオートクチュール権などのリターンが得られる。
  • 他のユーザの支払い分も含めて設定金額に達したら、作品を共同購入してどこかギャラリースペースで保管。もちろん単独で価格の100%を支払った場合はそのユーザが好きに保有してもいい。
  • 購入した作品は、保有比率の表示とともにデジタルデータとしてマイページに追加されてゆき、自分だけのアートコレクションとなる。また、そのコレクションはソーシャルメディアにコネクトして共有・拡散が可能。
  • ギャラリースペースに保管された作品は、オーナーの名前や保有比率のキャプションを付けて展示、一般公開される。

アート版Kickstarter+デジタルコレクション共有機能というか。

値段の高さに対するハードルは、共同購入することで自分の可能な範囲の負担で済むことで下げられる。

プロダクトとしての物質性に対するハードルは、デジタルデータとしてサイト上にコレクションできることと、実際に飾りたくなれば保有比率に応じてレンタルすることもできることで解決できる。

つまり、プロダクトそのものの所有権だけでなく、「所有感」と「支援したい気持ちの充実」を売る仕組み。
アートを買う生活上のタッチポイントがないこともWeb上でECサイト化することで解決できるんじゃないか。
欲しい作品があればリクエスト申請できてもいいかもしれない。

もし「共同購入・デジタルコレクション共有」の仕組みが上手くいけば、アーティストにとっては小品から大作まで買ってもらえる間口が広がるし、プロモーション・ファン獲得につながるかもしれない。
ユーザにとっては、欲しい作品を少額から買える=自分のできる範囲でアーティスト支援ができるし、マイページのアートコレクションはそれ自体が周りへ自己表現として発信可能なコンテンツにもなる。

ひとつのWebサービスとして考えたときにマネタイズの難しさはあるけど、サイト上で売買される金額の何%かを手数料として取るとか、成約された作品を一般展示するときに入場料を取るとか、方法が全くないわけじゃない。
マイページのコレクションルームをデコレーションするデジタルアイテムを売ってもいいかも。

この机上の空論が果たしてどれだけ上手くいくかは分からないけど、資本主義経済である以上、助成金とか以外のところで、少しずつでもお金が需要と供給の間で循環する仕組みを作らないとアートは強くならないし、いつ死んでもおかしくない。
プロ・インディーズに関わらず、アーティストと受け手の間でコミュニケーションとお金が巡る生態系を作ることは、これからあらゆるクリエイションにとって重要になってくる気がする。

これ、本気でやりたい。

でも、サイト制作のスキルはないし、ひとりでできることに限りがあるのも分かってる。
もし共感してくれる方がいたらぜひご連絡ください。特にプログラミングできるひと!
一緒にクリエイションのビオトープを作りましょう。

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